人体病理学教室のホームページにようこそ。
私どもの教室は、2015年1月から、新設された附属病院病理部と合体し、大学・大学院の教室名を人体病理学教室、附属病院科名を病理診断科と標榜し、基礎系講座から臨床系講座に所属変更となりました。今後、人体病理学教室は、臨床講座の一員として、人体病理学を教室の中心テーマとし、研究、教育、病理診断を行っていきます。
私は、富山医科薬科大学を卒業後、京都府立医科大学、メリーランド大学、山梨大学、埼玉医科大学で、病理診断、研究および教育に携わってきました。最初に師事した京都府立医科大学の故蘆原司教授には、疾患に起こっている細胞生物学的現象を考えながら病理診断をすることの重要性(楽しさ)を教えていただきました。それ以降、私は、病理診断において良悪性鑑別の基本である細胞異型に興味を持ち、“癌細胞の細胞形態異常の分子病理学的背景”を研究テーマにしています。さらに蘆原教授からは、病理学のみならず「自主、自立、自律、自由、自覚」という5つのキーワードをもとに若い人を育てることの重要性を教わりました。その後、留学したメリーランド大学では、Joseph R. Lakowicz教授に蛍光物理学の不思議さを、Steven G. Silverberg教授に病理診断学を学びました。山梨大学では、加藤良平教授に内分泌病理学を教えていただきました。埼玉医科大学では清水道生教授をはじめ専門分野ごとの5人の教授陣と総勢20名を超える病理医の中で、欧米式の病理診断学を体験させていただきました。ご指導をいただいた先生方のいずれもが、病理学のみならず医学以外の様々な分野に造詣が深く、その知識が病理学にも反映されており、病理学を楽しんでおられることに驚かされました。
さて、私が赴任しました和歌山は、南方熊楠(みなかた くまぐす)の故郷です。熊楠は、生物学者や民俗学者としてのみならず、米国や英国で活躍した国際性、自然保護運動を行った先駆性、スケールの大きい人間性など、様々な観点から近年、注目されており、テレビや雑誌でもよく取り上げられていますので、ご存じの方も多いと思います。熊楠は、1867年、和歌山城下橋丁(現・和歌山市)に生まれました。大学予備門(現・東京大学)を中退後、1886年に米国へ、1892年には英国に渡り、様々な学術研究を行い注目されました。特に英国では、ロンドン大学総長フレデリック・V・ディキンズに重用され、大英博物館に東洋研究員として資料の整理・研究に従事したようです。専門分野は主には植物学、特に隠花植物でしたが、様々な分野への探求心が強く、曼荼羅にもなぞらえられる知識の網を形成していきました。Nature誌に報告した論文は50を越え、今なお日本人最多だそうです。その後1900年に帰国し、和歌山・田辺市を拠点に、植物学や粘菌学の分野を中心に活動し、40種類を越える新種の粘菌を発見しています。熊楠が残した図譜や書簡を見ると、熊楠が常に新知見を求めた観察を行っていたことが判ります。熊楠が「最高の観察者」と言われる所以ではないでしょうか。また、「植物も興味深いが人類そのものも面白い」として民族学者としても活躍し、孫文や柳田国男らと親交がありました。さらに、“エコロジー(生態学)”という言葉を日本で初めて使い、全生命は互いに結ばれた生態系を形成しているという立場から自然保護を訴えた自然保護運動家の先駆者とされています。人物としては、癇癪持ちあるいは奇人・変人と評されていますが、おそらく頭に浮かぶあらゆる興味に何の迷いもなく探求心を躍らせたためでしょう。熊楠の講義を受けた昭和天皇は熊楠の強い個性が忘れられなかったようで、熊楠の死後、「雨にけふる神島を見て 紀伊の国の生みし南方熊楠を思ふ」と偲ばれています。
和歌山県立医科大学の人体病理学教室は、昭和32年に岡野錦弥先生が初代教授として赴任されて以来、55年にわたる歴史ある教室です。前教授・覚道健一先生の時代からは人体病理学教室を標榜し、病理学の中でも臨床病理学に重点を置いた研究を行ってきました。私は、その伝統を引き継ぎ、病理診断を中心とした臨床病理学、臨床病理を支える基礎病理学および教育を三本柱にし、これらをうまく融和させた教室を構築したいと考えています。診断病理学は得てして、教科書や文献に頼りがちです。私は、熊楠が書籍に頼る学問を戒め、学問における実践と独創性の重要性を説いた「学問はいき物で、書籍は糟粕だ」という言葉を肝に銘じ、独自のユニークな研究成果を求めていきたいと思っています。その中で、私が教わってきました“病理学を楽しむ”ということを若い病理医、細胞検査士、学生の皆さんに学んで欲しいと思っています。“楽しむ”病理学を学びたい若い病理医、細胞検査士、学生の皆さん、ぜひ、私たちの教室へ遊びにきてください。お待ちしています。
* 児玉 理恵子 (助教 2014/12/1-2015/3/31) 海南医療センター・病理診断科
* 丹羽 徹 (助教 2015/12/1-2016/6/30) 有田市立病院・内科
* 藤本 正数 (講師 2015/4/1-2019/9/30) 京都大学病院・病理診断科
* 割栢 健史 (助教 2012/2/1-2021/3/31) 新久喜総合病院・病理診断科
* 生駒 左江加 (秘書 2012/4/1-2020/3/31)
* 赤松 裕子(非常勤医師)富山病理診断ラボクリニック副院長
* 村上 大輔(非常勤医師・第二外科所属)
* 小池 将隆(非常勤医師・放射線科所属)
令和5年度
*伊藤 智雄 先生(神戸大学医学部附属病院病理部 教授)
*横尾 英明 先生(群馬大学医学部病態病理学講座 教授)
*浦野 誠 先生 (藤田医科大学ばんたね病院病理診断科 教授)
令和4年度
*森井 英一先生(大阪大学・病態病理学教室 教授)
*田中 伴典 先生(神戸大学医学部附属病院・病理部・病理診断科 特定助教)
*後藤 啓介 先生 (静岡県立静岡がんセンター 病理診断科 特別非常勤医)
令和3年度
*竹内 賢吾 先生(がん研究所病理部・部長)
*吉田 朗彦 先生 (国立がん研究センター中央病院 病理診断科)
令和2年度
*竹内 賢吾 先生(がん研究所病理部・部長)
*味岡 洋一 先生 (新潟大学大学院・分子・診断病理学分野・教授)
*吉田 朗彦 先生 (国立がん研究センター中央病院 病理診断科)
令和元年度
*大橋健一先生(横浜市立大学病態病理学・教授)
*柿田明美先生(新潟大学脳研究所病理学分野・教授)
平成30年度
*長嶋洋治先生(東京女子医科大学病院病理診断科・教授)
*大島孝一先生(久留米大学病理学講座・教授)
平成29年度
* 加藤良平先生(山梨大学人体病理学講座・教授)
* 吉澤明彦先生(京都大学附属病院病理診断科・講師)
平成28年度
* 森谷鈴子先生(滋賀医科大学臨床検査部・准教授)
* 田丸淳一先生(埼玉医科大学総合医療センター病理部・教授)
* 小川郁子先生(広島大学病院口腔検査センター・准教授)
平成27年度
* 羽賀博典先生(京都大学医学部附属病院・病理診断科・教授)
* 九嶋亮治先生(滋賀医科大学・臨床検査医学講座・教授)
* 小森隆司先生(東京都立神経病院・検査科・部長)
平成26年度
* 近藤哲夫先生(山梨大学医学部・人体病理学教室・准教授)
* 鷹橋浩幸先生(東京慈恵会医科大学・病理学講座・准教授)
* 小西英一先生(京都府立医科大学・人体病理学講座・講師)
平成25年度
* 河原邦光先生(大阪府立呼吸器アレルギー医療センター・病理診断科部長)
* 佐々木惇先生(埼玉医科大学・病理学教室教授)
* 井村穣二先生(富山大学・病理診断学講座教授)
* 石川雄一先生(がん研究会がん研究所・病理部部長)
* 柳澤昭夫先生(京都府立医科大学・人体病理学講座教授)
平成24年度
* 河原邦光先生(大阪府立呼吸器アレルギー医療センター・病理診断科部長)
* 清水道生先生(埼玉医科大学国際医療センター・病理診断科教授)
* 加藤良平先生(山梨大学・人体病理学講座教授)
和歌山県立医科大学の人体病理学教室は、病理学第二教室の初代教授として昭和32年に岡野錦弥先生(昭和32年7月~昭和35年3月)が赴任されて以来、
嶋崎昌義教授(昭和35年4月~昭和42年3月)、 永井清和教授(昭和42年9月~昭和54年6月)、 斉藤晃治教授(昭和55年2月~平成元年7月)、
覚道健一教授(平成2年~平成23年3月)、村田晋一教授(平成24年~)と55年超にわたる歴史ある教室です。初期には基礎的内容を中心とした幅広い研究が行われてきましたが、前教授・覚道健一先生の時代からは、大学の教室名を病理学第二教室、大学院の教室名を人体病理学教室と標榜し、病理学の中でも臨床病理学に重点を置いた研究を行うようになりました。さらに、村田晋一教授赴任後、2015年1月からは、新設された附属病院病理部と合体し、基礎系講座から臨床系講座に所属変更となり、附属病院の病理診断を担当することになりました。教室名は大学および大学院共に人体病理学教室、附属病院の科名は病理診断科を、標榜することになりました。なお、病理学第一教室は病理学教室となり、第一・第二教室という名称は無くなりました。今後、人体病理学教室は、臨床講座の一員として、臨床病理学や病理診断学を教室の中心テーマとし、研究、教育、病理診断を行っていきます。
詳細データ(PDF file)
第一代教授 岡野錦弥先生 昭和32年7月~昭和35年3月 |
第二代教授 嶋崎昌義先生 昭和35年4月~昭和42年3月 |
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第三代教授 永井清和先生 昭和42年9月~昭和54年6月 |
第四代教授 斉藤晃治先生 昭和55年2月~平成元年7月 |
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第五代教授 覚道健一先生 平成2年~平成23年3月 |
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