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病理学・病理医とは 〜一般の皆様へ〜

病理学とは

 病理学 (Pathology)とは、病気の病態を特に形態学の観点から研究する医学の一分野です。病理学の英語であるPathologyは病気を意味するギリシア語のパトス(pathos)と学問を意味するロゴス(logos)に由来します。
 病理学には、主に研究を行う基礎病理学(Basic Pathology)と臨床現場において病理診断を行う診断病理学(Diagnostic Pathology)があります。基礎病理学は、別名、実験病理学(Experimental Pathology)あるいは分子病理学(Molecular Pathology)とも言われ、様々な基礎的研究を行う大学の基礎講座の1つです。一方、診断病理学は、別名、人体病理学(Human Pathology)、外科病理学(Surgical Pathology)、病院病理学(Hospital Pathology)とも言われ、内科学や外科学と同じく臨床医学の1つです。日本の病院内では、”病理診断科”として、設置されています。しかしながら、直接、患者様を診察することがないことや大学病院や大きな市中病院などの診療拠点病院にしか設置されていなことから、一般の方々には馴染みのない臨床科です。病理診断学については、下にさらに内容を詳しく記載しています。
    

病理医とは

 病理医とは、病理学に携わる医師免許を持った医師のことで、基礎病理学を主に行う研究病理医と、臨床医の一員として病理診断を通して患者様の診断や治療に関与する診断病理医がいます。診断病理医の存在は、各々の病院の医療の質を高める上で、不可欠ですが、現在、日本では病理医の数が非常に少なく、医療の大きな問題点の1つとなっています。病理医は、臨床科の中で最も少なく、全国で2000名程度(米国は2万人)で、人口当たりの比較では米国の1/10に満たない数です。特に和歌山県は、人口10万人当たりの病理医の数が1.11と全国最下位です(日本病理学会2014年)。

病院における病理学(診断病理学/病理診断科)とは

 診断病理学とは病院の臨床部門での病理学で、病院内の科名としては、病理診断科を標榜しています。患者様に対して、適切な治療を行うためには、まず、病名を正しく診断することが重要です。診断病理学は、患者様の病名を診断する際に最終診断として大きな役割を果たします。診断病理学では、患者様の体より採取された病変の細胞や組織あるいは臓器を、肉眼的、顕微鏡的あるいは分子的解析法を用いて診断(これを病理診断と言います)します。臨床医は画像データや血液データなどの所見から病気の推定診断を行いますが、病理医は直接、病変の細胞や組織を観察することによって、疾患の確定診断を行います。特に癌の診断には病理診断は不可欠です。さらに、病理診断は、患者様の治療選択や予後を推定する上で、重要な指標を臨床医に 提供します。病気は、同じ病名でも患者様ごとに異なった病態を示し、予後も異なることから、患者様ごとに適切な治療(テーラーメイド治療)を行うことが重要です。病理診断では、患者様ごと異なる病態を最も如実に提示することができます。以上のような病気の診断や治療選択・予後推定に関わる病理診断は、医師免許が必要な"医行為"で、病理診断を専門とする医師が病理医です。病理医は直接、患者様を診察することはありませんが、病理診断を通して臨床医に適切なアドバイスをすることから、欧米諸国では、医者のコンサルタントdoctor of doctors(doctor’s doctor)と呼ばれています。

病理診断には以下のようなものがあります。
・ 細胞診断; 体内から剥離してきたり、綿棒や注射器などで採取された病変の
       細胞を用いて、主にがん細胞が含まれていないかの診断を行います。
・ 組織診断; 生検検体や手術で摘出された臓器に対して、病気の性質(炎症性疾
       患、がんを含めた腫瘍性疾患、循環障害性疾患、退行性疾患などの
       判別)や拡がりについて診断を行います。
・ 手術中の迅速診断; 手術の最中に上記の細胞診断や組織診断を行い、適切な
       手術が行えるように外科医をサポートします。特にがん細胞の有無や
       取り残しがないかの検索は重要です。
・ 病理解剖; 不幸にして病気によりお亡くなりになった患者様にたいして行われ
       る病理医による解剖のことを病理解剖あるいは剖検と言います。今後
       の医療の発展に生かされることから、”死から生を学ぶ”といわれ、
       その解析は、重要な病理診断の1つです。

 以上のような病理診断は、主治医に報告され、病気の診断や治療に生かされます。病院に病理医がいることは、より良質の医療を提供することにつながります。



和歌山県立医科大学人体病理学教室

〒641-8509
和歌山市紀三井寺811-1 アクセス

TEL 073-441-0635
FAX 073-444-5777
w-hupath@wakayama-med.ac.jp


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