<診断アプローチ>
1)
組織像のポイント:
a)
構造的所見;
正常組織との境界; 基本的に明瞭だが,周囲脂肪組織への移行像あり.
組織構造; 束状,花むしろ状など特定の構造はみられない.IgG4陽性形質細胞増加.
細胞密度/分布; 細胞密度は低く,細胞分布に規則性はみられない.
b)
細胞的所見;
分化; 線維芽細胞.紡錘形で核周囲細胞質に好塩基性変化あり.
異型性; 軽度核腫大に示されるごく軽度細胞異型.核分裂像はみられない.
2)
総論的推定:
a)
細胞由来; 線維芽細胞由来.
b)
細胞増殖性; 不規則で弱い増殖.
c)
病変の構築・質; 腫瘤形成性.リンパ球,形質細胞浸潤.辺縁に脂肪細胞.
d)
各論的推定:
a)
良悪性鑑別と鑑別疾患; 線維芽細胞由来再生性病変或いは良性腫瘍.
Inflammatory
pseudotumor,IgG4関連疾患,高分化型脂肪肉腫
b)
診断基準;
@
異型に乏しい線維芽細胞の特定の構造を形成しない腫瘤.
A
リンパ球及び形質細胞浸潤
c)
鑑別診断
IgG4関連疾患IgG4陽性形質細胞の増加と花むしろ状構造を呈する線維芽細胞増生や閉塞性静脈炎に示される特徴的な組織所見が診断基準となる.本症例では組織所見が基準を満たさないが,この様な症例を包括する可能性がある.
高分化型脂肪肉腫; 細胞異型を伴う脂肪細胞及び線維性間質内の紡錘形細胞の存在が診断基準となる.本症例では細胞異型に乏しい.
<最終診断>
Testis; Inflammatory pseudotumor.
<解説>
IgG4陽性形質細胞増加を伴う線維化に特徴づけられるIgG4関連疾患に対して,2011年に国際的な診断基準が提唱された (Modern Pathology (2012), 1?12).IgG4陽性形質細胞増加は炎症性疾患や悪性腫瘍においてもしばしば認められ,IgG4関連疾患に必ずしも特異的ではない.この診断基準ではIgG4関連疾患の確定には,IgG4陽性形質細胞増加のみならず,特徴的な組織所見として (1) リンパ球及び形質細胞の高度浸潤,(2) 少なくとも局所的に花むしろ状パターンを呈する線維化,(3) 閉塞性静脈炎のうち2項目以上が必要とされている.本症例ではIgG4陽性形質細胞の著明な増加を認めたが,これらの組織学的特徴を満たさなかった.
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