<診断アプローチ>
1)
組織像のポイント:
a)
構造的所見;
正常組織との境界; 腫瘤形成なし.
組織構造; びまん性に広がる小型濾胞.背景に胚中心を伴うリンパ濾胞が散見される.
細胞密度/分布; 細胞密度は高くないが,分布が不規則である.
b)
細胞的所見;
分化; コロイドを含む小型濾胞が散見される.
異型性; 核腫大,核形不整,クロマチン増大を示す細胞が一部にみられる.
2)
総論的推定:
a) 細胞由来; 甲状腺濾胞上皮細胞由来
b)
細胞増殖性; やや不規則で,ごく軽度の細胞増殖性.
c)
a)+b)からの推定; 再生性変化を伴う慢性炎症性疾患
d)
各論的推定:
腫瘤形成がないこと,小型濾胞が目立つこと,胚中心を伴うリンパ濾胞を伴うこと,出血・壊死や好中球は認めないこと,慢性リンパ球性甲状腺炎(橋本病)が示唆される.
e)
鑑別診断
1)
濾胞癌・乳頭癌; 細胞異型が目立つことから,悪性と誤認しないことが重要.腫瘤形成なく,乳頭癌の核所見もない.
2)
悪性リンパ腫; 橋本病を背景にMALT型リンパ腫が発生したときには,時に診断が難しい.Centrocyte-like cellsの増生や甲状腺濾胞内のリンパ球の存在はリンパ腫を示唆する.
<最終診断>
Thyroid; Chronic
lymphocytic thyroiditis (Hashimoto’s disease) with atypia.
<解説>
橋本病は,自己抗体による濾胞上皮の破壊とそれに対する反応性変化を示す慢性炎症性疾患である.肉眼的には,左右非対称性で,ゴム様の硬さを伴う甲状腺腫大を示すことから,臨床的に腫瘍が鑑別に挙がる.組織学的には,@小型濾胞,A上皮の好酸性変化,B間質のリンパ球や形質細胞の浸潤およびリンパ濾胞形成,を特徴とする.時に,線維化が目立つこと(fibrous variant)がある.また,大型異型細胞を伴うことがある.大型異型細胞は,増殖能のない多倍体化細胞である.細胞診では悪性と誤診されることあるので注意を要する.
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