<診断アプローチ>
1)
組織像のポイント:
a)
構造的所見;
正常組織との境界; 不明.
組織構造; 既存構造消失.乳頭状および管状構造.
細胞密度/分布; 細胞密度は高く,細胞分布は不規則.
b)
細胞的所見;
分化; 腺系上皮細胞,筋上皮への分化はない.介在導管上皮型細胞,分化の不明な腺上皮細胞,淡明細胞および空胞細胞が様々な割合で混在.腺房型細胞への分化はない.
異型性; クロマチン増大と核形不整を伴う細胞異型.
2)
総論的推定:
a)
細胞由来; 筋上皮分化を伴わない腺系上皮細胞由来.
b) 細胞増殖性; 不規則で強い増殖性.
b)
a)+b)からの推定; 腺細胞由来悪性腫瘍.
c)
各論的推定:
管状乳頭状構造+細胞質内空胞より,Acinic cell carcinoma,
papillary cystic variantが示唆される.
d)
鑑別診断
Sebaseous adenoma, Sebaseous lymphadenoma, Sebaseous carcinoma, Sebaseous lymphadenocarcinoma; 脂腺細胞への分化と空胞化細胞が鑑別に挙がる.
<最終診断>
Acinic cell carcinoma,
papillary cystic variant.
<解説>
漿液性腺房細胞への分化を示す低悪性度腫瘍と定義されるAcinic cell carcinomaの亜型の1つ.唾液腺腫瘍の3-6%,悪性腫瘍の7-17.5 %を占め,耳下腺が主たる発生部位(80 %)である.発症年齢は幅広く(平均44歳),小児では粘表皮癌に次いで多い.亜型には,microcystic variant, papillary-cystic variant, follicular
variant, adenomatous variant, oncocytic variant, dedifferentiated variant等がある.
組織学的には,Acinic
cell carcinomaは多彩で,腺房細胞(acinar cell) への分化を示す細胞以外にも,介在導管上皮(intercalated ductal cell)への分化を示す細胞,分化の不明な腺上皮細胞(non-specific glandular cell),淡明細胞(clear cell),空胞細胞(vaculated
cell)が様々な割合で混在する.漿液性腺房細胞への分化が少なく,導管細胞類似の細胞や分化の不明な腺上皮細胞が主体の場合は診断が困難となる.その際,空胞細胞(vaculated cell)は,特にmicrocystic variantやpapillary-cystic
variantに特徴的であり,診断の助けとなる.空胞の大きさや数は細胞によって多彩である.また,細胞診においても,空胞細胞の存在は,腺房型細胞の少ないAcinic cell carcinomaにおいて有用でとなる(細胞診症例C_Case3参照).
〒641-8509
和歌山市紀三井寺811-1 アクセス
TEL 073-441-0635
FAX 073-444-5777
w-hupath@wakayama-med.ac.jp