Urine; Reactive urothelial cells by stone.

60代女性，尿（自然尿）

　　

＜診断アプローチ＞

1)    細胞像のポイント：　

a)    構造的所見；　

構造； 孤在性集団性混在パターン，重積性とばらけを伴うシート状細胞集団　

細胞密度／分布；　出現細胞数は中程度，細胞密度は低い．

分布はほぼ規則的（不規則重積性はない）．

b)    細胞的所見；　

分化；　中心核，厚い／空胞状細胞質

異型性；　軽度核腫大およびのN/C比増大，核形不整なし，クロマチン軽度増量，

細胞間多彩性なし．

c)    背景；　清澄性．

2)    総論的推定：　

a)    細胞由来；　上皮性（尿路上皮由来）

b)    細胞増殖性；　ほぼ規則的で軽度の強さの細胞増殖性病変．

c)    細胞異型；　軽度

d)病変の構築；　細胞性

以上より，尿路由来の反応性異型あるいは低異型度尿路上皮性腫瘍．

3)    各論的推定：　

a)    推定疾患；　Reactive urothelial cells

b)    診断基準；

　　i) 主診断基準　
　　�@ 平坦な細胞集団．

　　　 �A 細胞異型に乏しい．N/C比増大，クロマチン軽度増大，核形不整の

　　　　　いずれかがみられる．　　　（全ては揃わない．）
　　　 * 細胞核の腫大は軽度（小型核）で，好中球の1.5倍以下．
　　　 * クロマチンの異常増量はない．
　　�B 中心性円形核．

　　　 �C 異型性に細胞間の多彩性が乏しい．
ii) 副診断基準

　　�@ 細胞に腺細胞や扁平上皮への分化が明らかでない．

　　　 �A クロマチンの異常増量はないのに核小体が目立つ．
　　�B 細胞質が厚い，あるいは空胞状である．

　　　 �C 核偏在性，立体核形不整，クロマチンi異常増量，細胞質の淡明さ

　　　　など，低異型度尿路上皮癌を示唆する所見がない．

4)    鑑別診断

低異型度尿路上皮癌；　細胞数がやや多く，低異型度尿路上皮癌を鑑別する必要があるが，不規則重積性，核偏在性，立体核形不整，クロマチン増量のいずれにも乏しい．

 

＜最終診断＞

Urine; Reactive urothelial cells by stone.

＊診断クルー

�@平坦な細胞集団，�AN/C比，軽度増大，�B中心性円形核，�Cクロマチン増加に乏しい．

＜解説＞

自然尿の細胞診では，�@不規則重積性を示す細胞集団，�AN/C比増大，�B核遍在性，�C立体核形不整，�Dクロマチン増加，�E細胞間の多彩性，を示す尿路上皮細胞を細胞の大きさに関わらず，異型尿路上皮細胞として認識することが重要である．�Aから�Eの全ての所見が揃った細胞は悪性であることが多い．逆に，細胞が小型で，�@から�Eの所見が揃わない場合は慎重に診断する必要がある．特にクロマチン増量を伴わない場合は良性のことが多い．悪性と判断した場合は，核の大きさおよびクロマチン増量の程度によって異型度を判断する．