<診断アプローチ>
1)
細胞像のポイント:
a)
構造的所見;
構造; 重積性が強い管状構造.管状構造の密度も高く,時に篩状構造.
細胞集団内に間質細胞の混在はない
細胞密度/分布; 多い細胞数+高度の細胞密度+不規則的な平面的・立体的細胞配列.
10〜20個程度の細胞集団においても上記所見を認める.
b)
細胞的所見;
分化; 偏在核+淡い細胞質.
異型性; @核腫大, A立体核,Bクロマチン増大や立体核形不整は目立たない.
c)
背景; 清澄性.壊死は認めない.
2)
総論的推定:
a) 細胞由来; 腺上皮細胞由来.
b) 細胞増殖性; やや不規則的で中等度から高度の強さの細胞増殖性病変
c) 細胞異型; 軽度
d)病変の構築; 細胞性
以上より,腺系の過形成や上皮内腫瘍が示唆される.
第一診断はEndometrioid adeno
carcinomaで,鑑別診断は
異型子宮内膜増殖症.
3) 各論的推定:
a) 推定疾患; Endometrioid adenocarcinoma, G1
b) 診断基準;
i) 主診断基準
@ 密度の高い腺管構造
A 10〜20個程度の小型の不規則重積性細胞集団
B 内膜間質細胞の欠除
ii) 副診断基準
@ 線維性間質を伴う分枝状細胞集団
A 不明瞭だが,やや汚い背景.
4)
鑑別診断
異型内膜増殖症; 細胞異型からは鑑別が困難である.密度の高い腺管構造,
不規則重積を示す
10〜20個程度の細胞集団,内膜間質細胞の欠除,線維性
間質を伴う分枝状
細胞集団,壊死性背景はEndometrioid adenocarcinoma,
G1を示唆する.
Glandular and stromal breakdown; 不規則重積を示す10〜20個程度の
細胞集団が出現するが,管状構造は欠除し,内膜間質細胞
が介在する.
<最終診断>
Endometrium; Endometrioid adenocarcinoma,
G1
*診断クルー
a) 密度の高い腺管構造,b) 不規則重積を示す10〜20個程度の細胞集団,
c) 内膜間質細胞の欠除,d) 線維性間質を伴う分枝状細胞集団,e) 壊死性背景
<解説>
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内膜細胞診では,細胞異型に乏しくとも,腺管密度増加,不規則重積性を伴う小細胞集塊,篩状や乳頭状構造などを示す細胞集団を認めた場合は注意を要する.特に大型細胞集団よりも,不規則重積性を伴う小細胞集塊に注目する必要がある.上記所見を認めた場合,管状構造が明らかでなく,間質細胞が目立つ場合は,Glandular and stromal
breakdownが示唆される.一方,管状構造や乳頭状構造を認めた場合は,内膜増殖症と類内膜腺癌が鑑別に上がり,線維性間質を伴う分枝状細胞集団や内膜間質細胞や壊死性背景の有無が,内膜増殖症と類内膜腺癌の鑑別ポイントとなる.鑑別に苦慮した場合は,無理をせず,生検に確定診断を委ねるべきである.
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