本文へスキップ

C_Case5

Ascites; Malignant lymphoma

60代男性,腹水(穿刺)

 


<診断アプローチ>

1)    細胞像のポイント: 

a)    構造的所見; 

構造; 孤立散在性.中皮細胞との移行像はなく,細胞間の接着性は認められない

細胞密度/分布; 高い細胞数.

b)    細胞的所見; 

分化; 中心核.

異型性; @核腫大, AN/C比増大,B比較的粗いクロマチン,C小さな核の切れ込みをもつ中型から大型の異型円形細胞の比較単調な細胞.

c)    背景; 清澄性.少量の壊死物質やlymphoglandular body.非腫瘍性中皮細胞.

2)    総論的推定: 

a)    細胞由来; 非上皮細胞由来.

b)    細胞増殖性; 比較的規則的で高度の強さの細胞増殖性病変.

c)    細胞異型; 中等度から高度

d)    病変の構築・質の推定; 細胞性病変.

以上より,円形細胞型非上皮性腫瘍.

     第一診断=悪性リンパ腫,鑑別診断=反応性リンパ球

3)    各論的推定: 

a)    推定疾患; malignant lymphoma

b)    診断基準; 

i)  主診断基準    

@   円形核で,比較的粗いクロマチン,核の切れ込み,lymphoglandular bodyの存在より,リンパ球由来であることが推定される. 

A      80%以上の細胞が非小型リンパ球である.

ii) 副診断基準

やや汚い背景.

4)    鑑別診断

a)    反応性リンパ球; リンパ球由来で,かつ,80%以上の細胞が非小型リンパ球であれば,反応性リンパ球であることはない.ただし,反応性リンパ球でも核小体を伴うことがある.

b)    低分化型腺癌; 細胞接着性、細胞内粘液、繊細なクロマチンを示す.

c)    中皮腫; 正常の中皮細胞を認める.

<最終診断>

Ascites; Malignant lymphoma, diffuse large B cell lymphoma

*診断クルー

a) 80%以上の細胞が非小型リンパ球の存在.

b) Lymphoglandular bodies27μmの大きさで好塩基性の境界明瞭な細胞質由来の円形物質)

<解説>

腹水細胞診をみるに当たっては,まず,正常中皮細胞を認識することが重要である.次に,含まれる異型細胞と中皮細胞の間に異型性に連続性があるか否かを観察する.連続性がなければ,由来細胞を細胞分化から推定することになる.リンパ球由来か否かは,細胞接着性のなさ,円形細胞,高いN/C比,核の切れ込み,比較的粗いクロマチン,lymphoglandular bodyから推定する.リンパ球由来で,その80%以上が非小型リンパ球であれば,悪性リンパ腫をまず考える.

和歌山県立医科大学人体病理学教室

〒641-8509
和歌山市紀三井寺811-1 アクセス

TEL 073-441-0635
FAX 073-444-5777
w-hupath@wakayama-med.ac.jp


↑バナー画像について

 サイト内検索
Loading