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C_Case13

Papillary carcinoma

30代女性,甲状腺(穿刺標本)

 

 <診断アプローチ>

1)    細胞像のポイント: 

a)    構造的所見; 

構造; 敷石状細胞集団および孤立散在性出現.乳頭状構造は明らかではない.

細胞密度/分布; 比較的細胞数は多い.

b)    細胞的所見; 

分化; 卵円形核+薄い細胞質.

異型性; @核腫大中等度, AN/C比軽度大,Bクロマチン軽度増大.

c)    背景; コロイドあり.ロピーコロイドではないが濾胞構造外の濃いコロイド.

2)    総論的推定: 

a)    細胞由来; 濾胞上皮由来.

b)    細胞増殖性; 比較的規則的で中等度から高度の強さの細胞増殖性病変.

c)    細胞異型; 中程度

d)    病変の構築・質の推定; 細胞性病変.

以上より,良性または悪性上皮性腫瘍性病変.乳頭状構造はないので,濾胞型乳頭癌および濾胞性腫瘍が鑑別に挙がる.

3)    各論的推定: 

a)    推定疾患; Papillary carcinoma of follicular variant. 

b)    診断基準; 

以下の主診断基準の@ABと副診断基準のEを認める.

i)  主診断基準(以下の中で@ABを認める)    

@   乳頭状構造は明らかではない,  A 細胞密度が高い, B 腫大を伴う卵円形核

C クロマチン増量を伴ったすりガラス状核,D 核溝を含む核形不整,E 核内細胞質封入体

ii) 副診断基準(以下の中でEを認める.)

@   ロピーコロイド(濃いコロイド),A 多核巨細胞,B 扁平上皮様化生細胞,

C 砂粒体,D 細胞質内隔壁,E アーモンド細胞withキャットスクラッチサイン

c)    鑑別診断; 

濾胞腺腫; 核所見がポイントとなる.

 

<最終診断>

Thyroid; Papillary carcinoma of follicular variant.

*診断クルー

クロマチン増量と腫大を伴った卵円形核,アーモンド細胞withキャットスクラッチサイン.

 

<解説>

 甲状腺の乳頭癌は乳頭状・濾胞状構造を示す濾胞上皮由来の悪性腫瘍であり,スリガラス状核,核溝,核内封入体などの特有の核所見を伴うことが多い.乳頭癌の亜型である濾胞型は,乳頭状構造を示さず,濾胞構造のみを示すため濾胞腺腫や濾胞癌との鑑別では核所見が主たる鑑別ポイントになる.

Chan JK (2002)は,濾胞型乳頭癌の組織診断基準として,以下の大基準4つの全てが当てはまるか、1つでも欠けたときは小基準の4つ以上が当てはまったときとしている.

【大基準】@卵円形核,A核密度高くかつ核極性消失,Bスリガス状核あるいは高頻度の核溝,C砂粒小体

【小基準]@不明瞭な乳頭状構造,Aいびつな形の濾胞,B濃いコロイド,C散見される核内封入体,D多核組織球

 細胞診では,クロマチン増量と腫大を伴った卵円形核が重要な基本的像であり,さらにいわゆるスリガス状核,太い核溝に代表される核形不整,核内封入体を伴った時に診断が可能である.我々は,本症例右図に示されるようなクロマチン増量と腫大を伴った卵円形核にヘテロクロマチンの顆粒が長軸方向に並ぶ所見をアーモンド細胞withキャットスクラッチサインとして乳頭癌細胞の特徴的所見と考えている.

 

 

和歌山県立医科大学人体病理学教室

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