＜診断アプローチ＞

1)    細胞像のポイント：　

a)    構造的所見；　

構造；　孤立散在性出現．

細胞密度／分布；　比較的細胞数は多い．

b)    細胞的所見；　

分化；　中心核＋やや淡い細胞質．

異型性；　�@核腫大中程度， �AN/C比軽度増大，�Bクロマチン増大，�C核小体腫大．

c)    背景；　基質産生あり．

2)    総論的推定：　

a)    細胞由来；　非上皮性細胞由来疑い．

b)    細胞増殖性；　比較的規則的で中等度の強さの細胞増殖性病変．

c)    細胞異型；　軽度

d)病変の構築；　細胞性

以上より，軟骨形成性の非上皮性腫瘍が示唆される．
　　　　細胞異型は強いわけではないが，第一診断は軟骨肉腫，

　　　　　 鑑別診断は，内軟骨腫．

3)    各論的推定：　

a)    推定疾患；　Chondrosarcoma, low grade.

b)    診断基準；

　　i) 主診断基準
　　�@ 細胞異型に乏しい非上皮性細胞
　　�A 軟骨基質の形成
ii) 副診断基準
　　�@ 粘液性背景
　　�A 類骨は認めない．

4)    鑑別診断

軟骨腫；　軟骨腫は通常細胞が取れないことが多い．核小体の腫大は通常みられない．

低分化型腺癌；　上皮性配列がまったくない．

＜最終診断＞

Bone; Chondrosarcoma, low grade.

＊診断クルー

�@軟骨と思われる基質産生性腫瘍．

�A細胞異型は弱くとも，細胞数が多いときは悪性を念頭におく．

＜解説＞

　骨における非上皮性腫瘍を考える場合は，細胞の形態と基質産生の有無からアプローチする．細胞形態は，紡錘形細胞，円形細胞，多形細胞，類上皮細胞，多核細胞，その他に分類する．次に，基質産生，すなわち，類骨や軟骨の産生がないかをみる．良悪性は，細胞数，核異型，核分裂像および壊死の有無が鑑別ポイントである．本症例の場合，軟骨基質産生性の円形細胞腫瘍である．良悪性は，前述したポイントに基づくが，悪性でも正常細胞と間違うほどの細胞異型しか示さない症例があることを知っておくことが必要である．この場合，最も大切なことは発生部位と臨床画像所見である．末梢骨の場合はほとんどが良性である．一方，大型骨で，腫瘤の大きさが大きい場合はほとんどが悪性である．なお，骨腫瘍では転移性上皮腫瘍が，原発性腫瘍では多発性骨髄腫が最も多いことから，必ず鑑別に上げることを忘れてはいけない．