＜診断アプローチ＞

1)    細胞像のポイント：　

a)    構造的所見；　

構造；　敷石状＋孤立散在性．重積性は軽度．

細胞密度／分布；　中程度の細胞数＋中程度の細胞密度＋やや不規則的な細胞配列．

b)    細胞的所見；　

分化；　中心核／偏在核＋細胞質はやや厚い．

異型性；　�@核腫大（>好中球の倍以上のものが散見）， �AN/C比増大，�Bクロマチン増大，�C立体核形不整．

c)    背景；　炎症性．

2)    総論的推定：　

a)    細胞由来；　尿路上皮細胞由来（扁平上皮や腺上皮への分化がない）．

b)    細胞増殖性；　軽度不規則的で中程度から高度の強さの増殖性病変．

c)    細胞異型；　中等度から高度

d)病変の構築；　細胞性＋炎症性

以上より，第一診断は尿路上皮癌，鑑別診断は，再生異型．

3)    各論的推定：　

a)    推定疾患；　尿路上皮癌

b)    診断基準；

　　i) 主診断基準
　　�@ 異型尿路上皮；　N/C比増大，クロマチン増大，立体核形不整
　　�A 核腫大（>好中球の2倍以上のものが散見）とクロマチン異常増量
　　　　＝高異型度を示唆
ii) 副診断基準
　　　細胞不規則分布

4)    鑑別診断

1)    反応性異型；　核腫大やN/C比増大はみられるものの，クロマチン増大には乏しい．

2)    異形成；　low grade urothelial carcinomaの所見に類似し，細胞数も少ない．

＜最終診断＞

Urine; Urothelial carcinoma, high grade.

＊診断クルー

　　�@細胞不規則分布，N/C比増大，クロマチン増大，立体核形不整の揃った異型尿路上皮細胞

　�Aクロマチン異常増量と少数の大型細胞

＜解説＞

　　尿路上皮細胞への分化を示す特徴的所見はなく，尿においては扁平上皮や腺上皮あるいは神経内分泌細胞への分化を示さない上皮細胞は尿路上皮と考えざるを得ない．尿路上皮病変では，細胞不規則分布，N/C比増大，クロマチン増大，立体核形不整を示す細胞を異型尿路上皮細胞と定義し，すべてが揃った場合は尿路上皮癌が示唆される．さらに，クロマチン増量と核の大きさの程度から異型度の判定を行う．